「瞑想でじっとしないといけないからやだ。」
「瞑想は面白くない。」
「瞑想は変化がなくてつまらない。」
そのように感じたことのある方はいますでしょうか?
確かに、一般的に知られている瞑想は、「床や地面に座り、同じ体制で30分ほど何かに集中する」というものだと思いますので、じっとしているのが苦手な人や集中力にあまり自信がないという方にとってはハードルが高いことかも知れません。
そこで今回は、そんな瞑想に慣れていない初心者の方や瞑想を何度かやっているけど、習慣化するのは少し難しいと感じている方におすすめの「歩く瞑想」をご紹介します。
Contents
歩く瞑想とは?
歩く瞑想とは、その名の通り、歩きながら行う瞑想のことです。
単純に好きなところを歩きながら呼吸に注意を向けるということもできますが、仏教に由来するマインドフルネスの一環として行われる歩く瞑想には、いくつかの歩き方のパターンがあります。
例えば、円を描くようにして歩いたり、直線を歩きUターンするように歩いたり、模様が書かれた地面の上を歩いたりします。また、長い距離を歩くことも可能です。
歩くペースはゆっくりが基本ですが、やり方によって多少変わることがあります。
瞑想の方法は、後ほどご紹介する歩きの6つのパートをさらに細かく設定することもできますし、単に空間を意識しながら歩くこともできます。
また、呼吸やマントラ[1]瞑想に使われる特定の言葉。言葉に意味があるものもあればないものもある。を取り入れることもできます。
この瞑想には多くの利点があることがわかっており、地に足がついた、バランスのとれた、穏やかな気持ちになることができると言われています。
また、周囲の環境や身体、思考に対する意識を高めるのにも役立ちます。
歩く瞑想の効果10選
通常座って行われる瞑想とは異なり、身体を動かすということからも想像いただけるかと思いますが、
歩く瞑想を行うことで、さまざまなメリットを得ることができます。
ここでは、歩く瞑想は瞑想的に歩くことで得られる様々な効果をご紹介します。
血流が良くなる
先ほど、歩く瞑想は、通常の瞑想とセットで行われることも多いと述べましたが、歩く瞑想は、長時間座っている人が行うことが多いです。
歩くことで、特に足の血流を良くすることができます。だるさや閉塞感を和らげる効果があります。
そのため、歩く瞑想は、長時間座ったままの仕事をしている方や運動不足を感じる方、身体を動かしてリフレッシュしたい方が血行を促進し、エネルギーレベルを上げるのに最適だと言われています。
消化を良くする
食後にウォーキングをすると、消化機能を高めることができます。
特に、体が重く感じたり、満腹感があったりする場合には効果的です。
体を動かすことで、食べ物が消化管を通りやすくなり、便秘の予防にもなります。
もちろんあまり激しい運動はお勧めできませんが、歩く瞑想ほどの動きであれば心地よく感じながら動くことができるかと思います。
不安を解消する
若年成人を対象とした2017年の研究では、ウォーキングと瞑想を組み合わせることで、不安の症状を軽減する効果が高まることが示されました。
ストレスレベルをより下げたいと思っている方は、歩く瞑想の前後に座位での瞑想の練習をするとよいでしょう。
不安レベルに最も大きな変化を示した参加者は、瞑想をしたか、歩く前に瞑想をしたか、瞑想の前に歩いたかのいずれかでした。
対照的に、ただ歩いただけのグループは、それほど大きな改善が見られませんでした。
つまり、ストレスの改善を目的とするなら座って行う瞑想と歩く瞑想を合わせた方が良いということですね。
血糖値と血行を改善する
2016年の小規模な研究では、仏教に基づいた歩く瞑想の実践が、2型糖尿病の人の血糖値と血行に良い影響を与えると結論づけられました。
研究では、実験への参加者は、歩く瞑想または単純なウォーキングを週に3回、12週間にわたって30分間実践しました。
仏教に基づく歩く瞑想を行ったグループは、単純なウォーキングを行ったグループよりも改善が見られました。
うつ病を緩和する
特に年齢を重ねるごとに、活動的であることは重要です。
定期的な運動は、フィットネスレベルを高め、気分を改善するのに役立ちますが、これらは高齢者にとっては難しい場合がありますよね。
そんな時に歩く瞑想です。
2014年に行われた小規模な研究によると、高齢者が週に3回、12週間にわたって仏教の歩く瞑想を実践したところ、うつ病の症状が軽減されました。また、血圧や、歩くことで得られる機能的フィットネスレベルも向上しました。
心身の健康の向上
可能な限り、公園や庭、木のある場所などの自然の中を散歩すると、全体的な幸福感が高まり、バランスのとれた気分になることができます。
森林浴の習慣は、リラクゼーションや脳の活動を高めるなどの長所があり、最近は日本でも人気があります。
2018年の研究によると、竹林の中を15分歩いた人は、気分、不安レベル、血圧に改善が見られました。
睡眠の質を向上させる
運動の効果を得るためには、激しい運動をする必要はありません。
2019年の研究では、定期的な適度な運動が睡眠の質に良い影響を与えることが示されました。
歩くことは、柔軟性を向上させ、筋肉の緊張を和らげるので、体調が良くなる可能性があります。
さらに、特に朝にウォーキングをすると、ストレスや不安の感情が軽減されやすくなります。
これらの効果により、心が落ち着いてクリアになり、毎晩、深い眠りにつくことができると言われています。
運動が楽しくなる
フィットネスにマインドフルネスの要素を取り入れると、運動がより楽しくなるかもしれません。
2018年に行われた研究では、10分間の歩きながらマインドフルネスの録音を聞いた人たちが、その活動をより楽しく感じたことを発見しました。
彼らは歩きながら自分の身体の感覚に気づくよう指示されました。
これは、マインドフルネスが、運動することを促す可能性を示しています。
創造性を高める
マインドフルネスを実践すると、思考パターンがより明確になり、集中力が高まり、創造性が刺激される可能性があります。
2015年の研究では、マインドフルネスと創造性の関連性が指摘されています。
そのため、マインドフルネスと結びついた歩く瞑想にも同様の効果があると考えられています。
それまでの間、マインドフルネスの実践が問題解決能力や新しいアイデアの育成をどのように高めるかを探ってみてはいかがでしょうか。
バランスを高める
2019年に行われた高齢女性を対象とした研究によると、歩く瞑想は、足首の意識や調整だけでなく、身体全身のより良いバランスを促すことが示唆されています。
歩く瞑想のやり方
以下の手順は、マインドフルネスの専門家であるジョン・カバット・ジン氏が指導するガイド付きウォーキング・メディテーションを参考にしています。このガイド付き瞑想やその他のガイド付き瞑想は、彼のオーディオブック「Mindfulness Meditation in Everyday Life」に収録されています。
場所を探す
比較的静かで、誰にも邪魔されず、観察もされないような場所で、10~15歩ほど往復できる道を探しましょう(ゆっくりと歩く瞑想は、慣れていない人には奇妙に映るかも知れないからです。)
歩く瞑想は、屋内でも屋外の自然の中でも行うことができます。
特定の目的地に到達することが目的ではないので、歩く距離もそれほど長くなくても構いません。
歩き始める
選んだ道に沿って10~15歩歩き、好きなだけ立ち止まって呼吸をします。
落ち着きを感じたら反対方向に歩いて車線の反対側まで戻り、そこでまた一息つきます。
さらにもう一度向きを変えて、歩き続けます。
各ステップの構成要素
歩く瞑想では、普段は自動的に行っている一連の動作を、非常にじっくりと考えて行います。
もしかすると人によっては、このステップを頭の中で分解することは、ぎこちなく、馬鹿げているとさえ感じるかもしれません。
しかし、少なくとも以下の4つの基本的な要素を意識してみてください。
1、片足を上げること。
2、 足を少し前に移動させること。
3、かかとを先にして足を床につける。
4、後方のかかとを持ち上げながら、前方の足に体重を移動させ、その足のつま先は床や地面に触れたままにする。
その後、このサイクルを続けます。
1、後ろ足を完全に地面から離す。
2、後ろの足が前に振られて下がるのを観察する。
3、後ろ足のかかとが地面につくのを確認する。
4、体が前に進むにつれて、その足に体重が移動するのを感じる。
歩く瞑想をやるためのヒント
歩く瞑想は非常にシンプルで、時間も短い時間から行うことができる瞑想の初心者の方にお勧めの瞑想の一つです。
歩く瞑想の効果をより感じるために気にしてみると良い点をいくつかご紹介します。
スピード
歩くスピードはどんな速さでも良いのですが、カバット・ジンのマインドフルネス・ベースド・ストレス・リダクション(MBSR)プログラムでは、歩く瞑想はゆっくりと、小さなステップを踏みながら行うことが推奨されています。
その理由は、その方がより身体の動き一つ一つを感じることができるからです。
しかし、最も重要なのは、大げさでなく、様式化されたものでなく、身体に違和感を感じることなく、自然にリラックスした状態で歩くことです。
手と腕
歩く瞑想を行う際の手や腕の位置は、リラックスした状態であれば、どのような場所でも良いとされています。
背中や前で手を組んでもいいですし、横に垂らしてもいいです。
運動の一環として歩く瞑想を行うと腕を強く動かしてしまいがちですが、あまり大きく動かすことを考えず、自然な動きを意識すると良いでしょう。
意識を集中する
例えば、息を吸ったり吐いたりする感覚、足の動きや地面や床との接触、首や肩でバランスをとっている頭の動き、
近くで聞こえる音や体の動きによって生じる音、目が目の前の世界に集中しているときの感覚など、
普段は当たり前のように感じている感覚に注意を向けてみましょう。
歩いているときは、できるだけ今の瞬間に意識を向けるようにしましょう。
周りの音や呼吸、体の感覚などに意識を向けてみましょう。
自分の考えに耳を傾け、浮かんでは消えていく思考を観察します。
心の迷いが生じたときの対処法
どんなに意識を集中させようとしても、どうしても心が揺れてしまうものです。
でも、それは自然なことです。
心の迷いに気づいたら、もう一度、自然や身体の動き、外の音などの感覚に集中してみてください。
歩く瞑想を日常生活に取り入れる。
多くの人にとって、ゆっくりとした正式な歩く瞑想は練習によって習慣に取り入れられますが、短時間であっても実践すればするほど、その魅力を強く感じてくるかと思います。
歩く速度はもちろん、走る速度でもマインドフルネスは可能ですが、歩幅や呼吸のペースは変わります。
時間をかけて、日常のどんな行動にも同じように意識を向けて、人生のあらゆる瞬間に得られる臨場感を体験してみてはいかがでしょうか。
正しい方法に縛られすぎないこと
今回は初心者の方でも簡単に試してみることができる歩く瞑想をご紹介しました。
歩く瞑想の効果ややり方を見てきましたが、大事なのは、よりリラックスした状態で、周囲や自分に意識を向けることです。
歩く瞑想では他の瞑想とは違い、身体を動かすことができる分、じっとしているのが苦手な人や集中するのが苦手という人におすすめです。
伝統的な歩く瞑想の正しいやり方を意識するのは大事ですが、より大事なのは、瞑想を行うご自身がストレスを感じることなく、リラックスした状態で瞑想を行うことができるかという点です。
そのため、まずは気軽に自然の中を歩きつつ、自分の身体の動きに意識をむけ、普段何気なくやっていることがどうなっているのかに気づくという体験をしてみていただけたら幸いです。
Walking Meditation
The Benefits of Meditation Walks
Mindfulness Meditation in Everyday Life and Exercises & Meditations MP3 CD – Unabridged, April 1, 2014
References
↑1 | 瞑想に使われる特定の言葉。言葉に意味があるものもあればないものもある。 |
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