この記事を読んでくださっている方の中には、すでに瞑想を実践していたり、瞑想について人から話を聞いたことがあり、瞑想は心にも身体にもとても良い効果があるということをご存知かもしれません。
その中で、これは自分にあった瞑想だ、と感じて頂けたものがあればとても良いのですが、もしかすると中には、「瞑想は自分には合わない」と思った方もいるかもしれません。
もし、瞑想に効果を感じなかったり、自分には合っていないと思うような経験がある方に少しだけお時間を頂けたら幸いです。
意外と知られていないこともあるのですが、瞑想にはさまざまな種類があります。
マントラの瞑想、ビジュアライゼーションの瞑想、集中瞑想、呼吸に基づく瞑想などなどです。
大事なことは、全てを試してみることでも、辛いのを頑張って乗り越えて身につけることでもなく、
自分に合ったものを見つけることです。
まずは、私たちのごく自然な状態を呼び起こすもの、「優しさ」から始める瞑想をご紹介したいと思います。
Contents
慈悲の瞑想とは?
慈愛の瞑想とは、簡単に言うと、
「心の中で唱える言葉やフレーズを使って、自分や他人に対する無条件の優しさや愛の感情を育む瞑想」
のことです。
マインドフルネス瞑想と同様に、この瞑想法は仏教の伝統に由来しており、「メッタ瞑想」としても知られています。英語では、”Loving-kindness meditation(愛と優しさの瞑想)として知られており、誰でも簡単に実践できることから人気がある瞑想の一つです。
慈悲の瞑想では、例えば「私が幸せでありますように」とか、「私が平和でありますように」という言葉を使います。あるいは、『平和を感じられますように」というものもあります。
また、マインドフルネスとは異なり、愛情のある瞑想では、「思考や感情に気づく」というステップはありません。そのため、「慈悲の瞑想」は、シンプルな瞑想を始めたい方には最適な方法と言えるかもしれません。[1]参考:https://www.pocketcoach.co/blog/7-powerful-reasons-to-try-loving-kindness-meditation/
本当に効果があるのか、疑ってかかってしまう気持ちはわかりますが、慈悲の瞑想の効果を徹底的に解説するので、これを読んだ後でやるかどうかを決めてみていただきたいです。
慈悲の瞑想の効果
慈悲の瞑想には非常に多くの効果があり、研究でも裏付けられます。
今回は、幸福感・回復・脳の中の感情的な知性・ストレスへの対応・社会とのつながり・自己愛という観点から慈悲の瞑想の効果をご紹介していきます。
幸福感
慈悲の瞑想は人の幸福感に影響を与えるとされています。
他人の言動に対して、ネガティブなイメージを持ってしまったり、自分の失敗から立ち直れなかったりする人に前向きな影響を与えると言われています。
ポジティブな感情が増え、ネガティブな感情が減る
アメリカで行われた研究で、7週間の慈悲の瞑想を実践すると、愛、喜び、満足、感謝、誇り、希望、関心、娯楽、畏敬の念が高まることを発見しました。
これらのポジティブな感情は、幅広い個人の資源(自己認識の向上、生きがい、社会的支援の意欲、病気の症状の軽減など)に良い影響をもたらし、その結果、人生の満足度の向上と鬱症状の軽減が確認されました。
また、参加者は瞑想開始から2ヶ月以内に、人生全体の満足度が高まったと報告しています。[2]参考:Open hearts build lives: positive emotions, induced through loving-kindness meditation, build consequential personal resources
そのため、慈悲の瞑想は、うつ病や社会不安の軽減に役立つことが期待されています。[3]参考:7 Powerful Benefits Of Loving Kindness Meditation
迷走神経の緊張を高め、ポジティブな感情や社会とのつながりを感じることができる
同じくアメリカの研究によると、慈悲の瞑想に参加した人は、そうでない人と比べ、ポジティブな感情が増加しました。結果、参加者の社会的なつながりの認識が増加し、個人のポジティブな感情と社会のつながりによる更なるポジティブな行動・健康につながるといった良いスパイラルを生み出したことを示唆しています。
[4]参考:How positive emotions build physical health: perceived positive social connections account for the upward spiral between positive emotions and vagal tone
身体的・精神的な回復
多くの人は、瞑想は気分にこそ効果はあれど、肉体的な病気や精神的な重篤な病気に効果があるとは信じていません。しかし、研究によると、実はそのような症状にも瞑想は効果を発揮することが明らかになりました。
偏頭痛の軽減
長年、片頭痛に悩まされている方に朗報です。
最近の研究では、短時間の慈悲の瞑想が片頭痛の痛みを軽減し、慢性的な片頭痛に関連する感情的な緊張を和らげる即効性があることが実証されました。
同じ研究では、驚くべきことに、痛みと緊張が平均してそれぞれ33%と43%減少したという結果が出ています。
[5]参考:Meditation-based treatment yielding immediate relief for meditation-naïve migraineurs
慢性的な痛みを減少させる
慢性的な痛みを軽減する効果もあるようです。
ある8週間の試験的な研究では、慈悲の瞑想が、最悪の痛みの1つである慢性腰痛にどのような効果をもたらすかを調べました。瞑想プログラムは、慢性的な腰痛に対する標準的な治療よりも効果的であることがわかっただけでなく、愛情あふれる優しさの瞑想は、痛み、怒り、心理的な苦痛のより大きな減少と関連していました。[6]参考:Loving-kindness meditation for chronic low back pain: results from a pilot trial
PTSDを減少させる
ある研究では、12週間の慈悲の瞑想のコースが、PTSD[7] … Continue readingと診断された退役軍人のうつ病とPTSDの症状を有意に減少させたことがわかりました。[8]参考:Loving-kindness meditation for posttraumatic stress disorder: a pilot study
統合失調症スペクトラム障害を減少させる
別の研究では、統合失調症スペクトラム障害[9]陽性・陰性の症状に加えて、認知機能障害を特徴とする主要な精神疾患。参考:Schizophrenia Spectrum Disorderのある人を対象に、慈悲の瞑想の効果を調べました。
その結果、慈悲の瞑想は、ネガティブな症状の減少、ポジティブな感情の増加、心理的な回復と関連することが示されました。[10]参考:A pilot study of loving-kindness meditation for the negative symptoms of schizophrenia
脳の中の感情的な知性
脳は私たちの活動によって形作られることがわかっています。
定期的に慈悲の瞑想を実践することで、共感や感情的知性をつかさどる脳の領域が活性化され、強化されること明らかになりました。
脳内の共感と感情処理を活性化する
慈悲の瞑想は、他者からの愛やつながりを感じることを促すと同時に、他者への愛やつながりを感じることが期待されている。そのような他者とのつながりや社会とのつながりを感じることは、内側前頭前野[11]大脳皮質の一部で、社会的やりとりにおける聴覚などの感覚や他者の反応に対する嬉しさに関係すると言われている。参考:生理学研究所を活性化させることがわかりました。
灰白質の量が増える
近年、他人の痛みに対する共感反応と脳の島皮質や前帯状皮質が関与していることは明らかになってきました。
アメリカで行われた瞑想の初心者と熟練者が慈悲の瞑想を行なっている間の脳活動をfMRIで確認するという研究によると、慈悲の瞑想の熟練者は、実験の中で初心者と比較して島皮質の強い活性化がみられました。
この結果は、慈悲の瞑想が、感情的な刺激への共感や心の動きに関連する脳の回路の活性化に影響することを示しました。[12]参考:Regulation of the neural circuitry of emotion by compassion meditation: effects of meditative expertise
ストレスへの対応
慈悲の瞑想は、心理生理学的にもメリットがあり、より失敗や挫折からの回復力を高めたり、心のダメージを減少させる効果があることがわかりました。
呼吸性洞調律(RSA)を増加させる
たった10分間の慈悲の瞑想は、副交感神経の心臓制御(リラックスした回復状態に入る能力)の指標である呼吸性洞性不整脈(RSA)を増加させます。
それにより呼吸数が減る(つまり、よりリラックスする)ことで証明されるように、即時的なリラックス効果があるとされています。[13]参考:An Analogue Study of Loving-Kindness Meditation as a Buffer against Social Stress
生物学的老化を遅らせる
テロメアの長さ[14] … Continue readingはストレスにより短くなることがわかっています。
慈悲の瞑想の経験がある女性は、同世代の瞑想経験がない人と比較して、テロメア長が長いことを発見しました。長生きすることを考えるなら、高価なアンチエイジングクリームを捨てて、瞑想クッションを手に入れる方が良いかもしれません。[15]参考:Loving-Kindness Meditation practice associated with longer telomeres in women
社会とのつながり
すでに社会との関わりに感する研究をいくつか見てきましたが、慈悲の瞑想は社会の中で生きていく上で特に必要とされる大事な感情や感覚にも良い影響を与えることがわかってきています。
あなたをより親切な人にする
慈悲の瞑想は、自分の感情だけでなく、他人に対する態度にも良い影響を与えるようです。
例えば、社会的行動に対する慈悲の瞑想の効果を調べるための研究を行ったところ、ゲームの中で、他者への助け合いの行動が増加したことを明らかにしました。[16]参考:What Is Memory?
思いやりの気持ちを高める
瞑想に関する研究では、自分への愛と他者への思いやりの気持ちを高めるためには、慈悲の瞑想が最も効果的な瞑想である可能性があると結論づけられています。[17]参考:The Role of Mindfulness and Loving-Kindness Meditation in Cultivating Self-Compassion and Other-Focused Concern
in Health Care Professionals
共感性を高める
慈悲の瞑想を行うことで、他者の苦痛に共感できる能力を高めることができることがわかりました。また、たとえ苦痛を感じている他者を目撃した場合でも、ネガティブな感情を抱くのではなく、肯定的な感情を持つことができることも明らかになった。[18]参考:Functional neural plasticity and associated changes in positive affect after compassion training
他者への偏見を減少させる
黒人やホームレスの人に対する先入観を測る研究では、6週間の慈悲の瞑想により、人の心は一般的に偏見を持たれている人々への態度を改善することが明らかになりました。
瞑想が社会やグループに対しても良い影響を与えるということが明らかになる実験となりました。[19]参考:The nondiscriminating heart: lovingkindness meditation training decreases implicit intergroup bias
社会的つながりを高める
慈悲の瞑想によってポジティブな感情が高まったと報告した人は、社会的なつながりを感じることができることがわかりました。つまり、他人との関係において感じる主観的な帰属感や親近感を感じることができるということです。また、別の研究では、自然とのつながりを感じることができるという点で、段階的筋弛緩法よりも優れていることがわかりました。[20]参考:How Positive Emotions Build Physical Health: Perceived Positive Social Connections Account for the Upward Spiral Between Positive Emotions and Vagal Tone
自分に対する肯定的な認識
自分を愛することや自分の努力や実績を認めること、自分の存在を認めることは、大事だとわかってはいてもすぐにできる簡単なことではないかもしれません。
また、人によっては、食生活や定期的な運動など、自分の心と身体のためになることを意識的に行うことも難しいと感じるかもしれません。慈悲の瞑想はそのような自分に向けた肯定的な感情を育むためにも効果があるとされています。
自己批判の抑制
不安を抱える多くの人にとって、自分の中で自分を否定してしまう感情は、時に非常に残酷なものです。
慈悲の瞑想は、特に傷つきやすい人の自己批判を軽減することがわかっています。
また、愛情の瞑想は、瞑想を行なってから3ヶ月経っても、ネガティブな感情を減少させ、ポジティブな感情を増加させることがわかりました。[21]参考:A wait-list randomized controlled trial of loving-kindness meditation programme for self-criticism
短期的および長期的な影響
愛する心の瞑想の良いところは、短期間、数分実践するだけでも効果がある即効性の高さと長く続けることでも持続的な効果があることです。
短時間でも効果がある
慈悲の瞑想は、10分以内の短い時間で行うことでも効果があることがわかっています。
わずか数分間の慈悲の瞑想でも、社会的なつながりの感情や、見知らぬ人に対するポジティブな感情が高まることが明らかになりました。[22]参考:Genome Analyses of >200,000 Individuals Identify 58 Loci for Chronic Inflammation and Highlight Pathways that Link Inflammation and Complex Disorders
長期的な影響がある
ある研究では、慈悲の瞑想を行なった参加者の35%が、瞑想を行なってから15カ月後も瞑想を継続し、ポジティブな感情の高まりを実感していたことがわかりました。ポジティブな感情は、毎日の瞑想に費やした分数と正の相関がありました。[23]参考:In search of durable positive psychology interventions: Predictors and consequences of long-term positive behavior change
興味を持った方は慈悲の瞑想の実践へ
今回は、自分や他人に対する愛の感情を高めてくれる慈悲の瞑想の効果についてご紹介してきました。
慈悲の瞑想の効果を振り返ってみると、
幸福感
・ポジティブな感情が増え、ネガティブな感情が減る
・迷走神経の緊張を高め、ポジティブな感情や社会とのつながりを感じることができる
身体的・精神的な回復
・偏頭痛の軽減
・慢性的な痛みを減少させる
・PTSDを減少させる
・統合失調症スペクトラム障害を減少させる
脳の中の感情的な知性
・脳内の共感と感情処理を活性化する
・灰白質の量が増える
ストレスへの対応
・呼吸性洞調律(RSA)を増加させる
・生物学的老化を遅らせる
社会とのつながり
・あなたをより親切な人にする
・思いやりの気持ちを高める
・共感性を高める
・他者への偏見を減少させる
・社会的つながりを高める
自分に対する肯定的な認識
・自己批判の抑制
短期的および長期的な影響
・短時間でも効果がある
・長期的な影響がある
このように、さまざまな研究で慈悲の瞑想には、身体的・精神的な良い効果がありました。
この中に一つでも今の皆さんの状況に合うものがあればぜひ慈悲の瞑想の試してみていただきたいと思います。
こちらの記事で他の瞑想法と一緒に慈悲の瞑想の方法についても触れていますので、興味のある方はご覧いただけたらと思います。
あなたに合った瞑想を見つけよう!9つの瞑想の種類とそのやり方を徹底解説!
きっと何らかの効果を感じていただけるかと思います。
References